はじめに

2026年9月2日は、New Relic から2件のアップデート情報が公開されました。Infrastructure Agent のマイナーバージョンアップデートと、Mobile Agent に関する技術解説記事です。特に注目すべきは、Infrastructure Agent 1.80.2 における nri-flex の更新によるセキュリティ強化と、Mobile Agent における広告ブロック環境下でのデータ収集課題への対処方法です。前者はセキュリティ体制の強化、後者はモバイルアプリ監視の可視性確保という、SRE が直面する実運用上の課題に直結する内容となっています。

注目アップデート深掘り

Infrastructure Agent 1.80.2: nri-flex 更新によるセキュリティとカスタムメトリクス収集の強化

Infrastructure Agent 1.80.2 では、依存ライブラリである nri-flex が v1.18.12 に更新されました。この更新は一見地味なマイナーバージョンアップに見えますが、実は本番環境のセキュリティ体制と監視の安定性に直結する重要な変更です。

なぜ重要か

nri-flex は、標準的な統合では対応できないカスタムアプリケーションや独自システムからメトリクスを収集するための柔軟なツールです。多くの企業では、レガシーシステムや社内ツール、サードパーティAPIからのメトリクス取得に nri-flex を活用しています。この依存ライブラリの更新により、バグ修正やセキュリティパッチが適用され、本番環境のリスクが軽減されます。

SRE業務への具体的な影響

セキュリティ脆弱性が解決されることで、Infrastructure Agent を稼働させている全ホスト(EC2インスタンス、オンプレミスサーバー等)のリスクが低減されます。特にカスタムメトリクスを多用している環境では、nri-flex の安定性向上により、既存の監視設定がより堅牢になります。マイナー更新のため、破壊的変更のリスクは低く、段階的な本番展開が可能です。

アップグレード推奨アプローチ

リリースノートの記載に沿えば、このバージョンは依存ライブラリの更新が主な内容であるため、既存の設定ファイルや監視ルールへの影響は最小限です。まずは開発環境やステージング環境でアップグレードを実施し、カスタムメトリクスの収集が正常に継続されることを確認した後、本番環境へ展開することが推奨されます。AWS環境では特に、ECSタスク定義やEC2のAuto Scalingグループのイメージ更新タイミングに合わせた計画的な適用が効果的です。

Mobile Agent における広告ブロック環境での監視課題と対策

New Relic Mobile Agent が広告ブロック機能(VPNレベルやDNSレベルのブロッキング)の影響を受け、データ収集が阻害される課題についての技術解説が公開されました。

Note: この記事は公式リリースではなく、技術解説ガイドです。詳細は出典記事を参照してください。

なぜ重要か

昨今、プライバシー保護の観点から、エンドユーザーが広告ブロックツールやVPNサービスを利用するケースが増加しています。これらのツールがNew Relicへの通信をブロックしてしまうと、実際にはアプリがクラッシュしていたり、パフォーマンス劣化が発生していても、SREチームはその情報を受け取れません。つまり、監視の「死角」が生まれてしまうのです。

SRE業務への具体的な影響

クラッシュレポートやパフォーマンスメトリクスが欠落すると、SLI(Service Level Indicator)の測定精度が低下します。例えば、実際のエラー率が5%であるにも関わらず、広告ブロックによってデータが収集できないユーザーが多い場合、見かけ上のエラー率は2%程度にしか見えず、インシデント検知が遅延します。また、特定のユーザー層(セキュリティ意識の高いユーザー)からのフィードバックが得られないため、品質改善活動にバイアスが生じる可能性もあります。

対応方針

解説記事では、代替通信経路の設定など回避策が提示されています。SREチームとしては、ステージング環境で広告ブロック環境を再現したテストケースを用意し、Mobile Agent の通信が正常に機能するかを検証するプロセスをCI/CDパイプラインに組み込むことが推奨されます。これにより、より多くのユーザー環境からデータを確保でき、監視体制を強化できます。

SRE視点での活用ポイント

セキュリティ強化とカスタム監視の信頼性向上

Infrastructure Agent 1.80.2 の適用により、依存ライブラリのセキュリティパッチが適用され、本番環境のリスクが軽減されます。特に AWS 環境で多数の EC2 インスタンスや ECS タスクを運用している場合、脆弱性対応の遅延は重大なセキュリティインシデントにつながります。このマイナー更新は破壊的変更のリスクが低いため、定期メンテナンスウィンドウを利用した段階的な適用が可能です。

カスタムメトリクス収集に nri-flex を活用している場合、今回の更新により監視設定の安定性が向上します。例えば、独自開発した社内ツールのメトリクスや、サードパーティAPIからのデータ取得をおこなっている環境では、エージェントの安定稼働が監視精度に直結します。

モバイルアプリ監視の可視性確保

Mobile Agent に関する広告ブロック対応については、実際のユーザー環境を模したテストが重要です。QA環境やステージング環境で、広告ブロックツールを有効化した状態でのアプリ動作確認を実施し、New Relic へのデータ送信が正常に機能するかを検証しましょう。

アップグレード時の注意点

Infrastructure Agent のアップグレードは、まず少数のホストで試験的に実施し、カスタムメトリクスの収集が継続されることを確認してから、全体へ展開することが推奨されます。特に nri-flex を使用した複雑な設定がある場合は、設定ファイルの互換性を事前に確認しましょう。AWS環境では、Auto Scalingグループの一部インスタンスのみを先行アップグレードし、CloudWatchアラームや New Relic のアラート条件で異常がないことを確認する手順が有効です。

全アップデート一覧

カテゴリ対象概要リンク
Infrastructure AgentInfrastructure Agent 1.80.2依存ライブラリ nri-flex を v1.18.12 に更新。バグ修正とセキュリティパッチの適用により、カスタムメトリクス収集の安定性とセキュリティ体制を強化詳細
OtherNew Relic Mobile Agent広告ブロック(VPN・DNSレベル)の影響によるデータ収集阻害の課題と回避策に関する技術解説ガイド。モバイルアプリ監視の可視性確保のための対策方法を提示詳細

まとめ

本日のアップデートは、Infrastructure Agent のセキュリティと安定性の向上、そして Mobile Agent の運用における実践的な課題への対処という、実運用に直結する内容でした。Infrastructure Agent 1.80.2 は、依存ライブラリの更新という地味ながらも重要なセキュリティ対応であり、特にカスタムメトリクスを活用している環境では早期の適用が推奨されます。また、Mobile Agent における広告ブロックの影響に関する解説は、モバイルアプリ監視の可視性を確保する上で見過ごせない課題を提示しています。SREチームとしては、セキュリティパッチの計画的な適用と、エンドユーザー環境を考慮した監視設計の両面で、これらの情報を活用していくことが求められます。


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