OpenAI Codex CLI rust-v0.146.0 リリース解説

はじめに

2026年7月29日、OpenAI Codex CLI の Rust バージョン rust-v0.146.0 がリリースされました。本リリースでは、セッション管理の柔軟性向上、プラグインエコシステムの拡充、スレッド履歴のフォーク機能、そしてプロキシ設定の一貫した適用といった多岐にわたる改善が施されています。

主な変更点は以下の通りです:

  • /new/clear コマンドでのセッション命名、重要なスレッドのピン留め、サイド会話の保持機能
  • Agent Plugins マニフェストのサポートと、Amazon Bedrock、Claude Code 向けプラグインマーケットプレイスの拡張
  • ページネーション対応のスレッドフォーク機能(一時的なフォークも含む)
  • WebSocket 経由でのリモート Code Mode ホスト接続
  • 認証、プラグインダウンロード、MCP、リモート実行全体でのプロキシ設定の統一的な適用
  • MCP 接続の維持と再接続の改善、ターミナル応答性の向上

影響が大きいのは、複数のスレッドを並行して扱うケースと、プロキシ経由の通信が必須の環境です。


注目アップデート深掘り

1. セッション管理の大幅強化:名前付け・ピン留め・サイド会話の保持

本リリースでは、/new/clear コマンドでセッションに名前を付けられるようになり、重要なスレッドをピン留めできるようになりました。さらに、サイド会話(副次的なスレッド)を閉じることなく別のスレッドへ切り替えられる機能が追加されています(#34605, #34840, #35011)。

何ができるようになったのか

リリースノートが挙げているのは次の3点です。/new または /clear でのセッション命名、重要なスレッドのピン留め、そしてサイド会話を閉じないままのスレッド切り替えです。変更ログ側では、ピン留めが app-server に永続化される実装(#34840)として記載されています。

複数のトピックを並行して扱う場合、名前を付けたスレッドとピン留めによってスレッドの識別と再訪がしやすくなり、サイド会話を閉じずに別スレッドへ移れるため、切り替えのたびに会話を畳む必要がなくなります。

なお、セッション名の具体的な指定構文やピン留めしたスレッドの表示位置については、リリースノートに記述がありません。実際の操作方法は Codex CLI 上で /new/clear を実行して確認してください。

2. プロキシ設定の統一的な適用とネットワーク透過性の向上

本リリースでは、認証、プラグインダウンロード、MCP 認可、リモート実行、WebSocket、リダイレクト、LM Studio 接続といった全てのネットワーク通信において、設定されたプロキシが一貫して尊重されるようになりました(#34479, #34509, #34655, #34678, #35023, #35056, #35239)。

なぜ重要なのか

すべての外部通信が HTTP プロキシを経由する必要がある環境では、ツールの一部の通信経路だけがプロキシを無視すると、その経路が使えなくなります。本リリースはこれを Bug Fix として扱っており、対象となった経路が広いことが特徴です。

対応された通信経路

リリースノートおよび変更ログに列挙されている経路は以下の通りです。

  • リダイレクトをまたぐシステムプロキシ経路の再解決(#34479)
  • リモートプラグイン取得時のシステムプロキシ設定の尊重(#34509)
  • 認証リフレッシュ時の設定済みプロキシ経路の適用(#34655)
  • LM Studio リクエストの共有 HTTP クライアント経由化(#34678)
  • exec-server HTTP 通信への設定済みプロキシポリシー適用(#35023)
  • exec-server WebSocket の設定済みプロキシ経由化(#35056)
  • MCP 認可ディスカバリのランタイム HTTP クライアント経由化(#35239)

別項目として、Windows サンドボックスの Guardian セッションでプロキシ設定を保持する修正(#35036)も含まれています。

これらはいずれも「設定済みのプロキシを尊重する」方向の修正であり、Codex CLI 側に新しいプロキシ設定項目が追加されたわけではありません。プロキシの指定方法そのものについてはリリースノートに記述がないため、既存の設定方法を前提に動作が広がったものと読むのが妥当です。


実用的な活用ポイント

日常の開発ワークフローへの影響

本リリースの変更点は、実務上おおむね次の3方向に効きます。

マルチタスクの取り回し
名前付きセッションとピン留めにより、複数のスレッドを識別して使い分けやすくなります。サイド会話を閉じずに切り替えられるため、作業中に別の調査へ寄ってから元のスレッドに戻る流れが取りやすくなります。

プロキシ環境での通信経路のカバー範囲拡大
認証、プラグインダウンロード、MCP 認可、リモート実行、WebSocket、リダイレクト、LM Studio 接続がいずれも設定済みプロキシを尊重するようになりました。プロキシ必須の環境では、これまで個別に引っかかっていた経路が減ります。

プラグインエコシステムの拡張
Agent Plugins マニフェストのサポート(#35105)、ワークスペースプラグインの公開機能(#35254)、Amazon Bedrock や Claude Code 向けマーケットプレイスの追加(#34931, #34979)により、組織内で独自のプラグインを共有したり、外部マーケットプレイスから追加機能を取得したりすることが容易になります。

SRE/インフラエンジニアの視点での活用シーン

リモート Code Mode ホストへの接続
app-server からリモート Code Mode ホストへ WebSocket で接続できるようになりました(#35078, #35098)。リリースノートの記述はこの接続経路の追加までで、どの環境をリモートホストとして想定しているかには触れていません。

executor 提供スキルの検出とリソース読み取り
executor が提供するスキルを検出し、明示的に選択されたスキルに紐づくリソースを安全に読み取れるようになりました(#35184, #35198)。あわせて、コンテキスト予算が厳しい状況でスキルカタログをより多く保持し、切り詰めが必要になった場合は警告する修正(#34732, #34738, #34997)も入っています。スキル数が多い環境では、カタログが黙って削られる状況が把握しやすくなります。

MCP 接続の維持と再接続
認証や設定が変更された際に MCP 接続と Apps ツールを最新の状態に保ち、閉じられたサーバーを再接続する一方で、健全な接続は再起動しない挙動になりました(#34952, #34957, #35028, #35144, #35146, #35151)。長時間のセッションで MCP ベースのツールを使う場合、設定変更のたびに全接続が作り直される事態を避けられます。


全変更点一覧

カテゴリ変更内容概要
Featureセッション命名・ピン留め・サイド会話保持/new/clear でセッション名を指定可能。重要なスレッドをピン留めし、サイド会話を閉じずに保持できる (#34605, #34840, #35011)
FeatureAgent Plugins マニフェストとマーケットプレイス拡張Agent Plugins マニフェストのサポート、ワークスペースプラグイン公開機能、Amazon Bedrock と Claude Code 向けマーケットプレイス追加 (#35105, #35254, #34931, #34979)
Featureスレッドフォーク機能ページネーション対応履歴を含むスレッドフォーク、一時的なフォーク(スレッド一覧に表示されない)をサポート (#35220, #35251)
Featureリモート Code Mode ホスト接続WebSocket 経由で app-server からリモート Code Mode ホストへ接続可能 (#35078, #35098)
Featureカスタムモデルプロバイダーでのスタンドアロン Web 検索互換性のあるカスタムモデルプロバイダーで独立した Web 検索を有効化 (#34846)
Featureexecutor 提供スキルの検出とリソース読み取りexecutor が提供するスキルを自動検出し、明示的に選択されたスキルのリソースを安全に読み取り (#35184, #35198)
Fixプロキシ設定の統一的適用認証、プラグイン DL、MCP 認可、リモート実行、WebSocket、リダイレクト、LM Studio 接続全体でプロキシを尊重 (#34479, #34509, #34655, #34678, #35023, #35056, #35239)
FixMCP 接続の維持と再接続認証・設定変更時に MCP 接続と Apps ツールを最新に保ち、閉じられたサーバーを再接続(健全な接続は維持) (#34952, #34957, #35028, #35144, #35146, #35151)
Fixメッセージ・レスポンス・エラー情報の保持送信済みメッセージ、最終レスポンス、失敗ターンエラー、インポート時刻、承認設定を中断・リプレイ・インポート・フォーク時に保持 (#34839, #34777, #35524, #34989, #34664)
Fixターミナル応答性とレンダリング改善非ブロッキング割り込み、キーボード処理、狭いレイアウト、ハイパーリンク、メンション結果のリフレッシュなど (#35000, #35021, #34775, #34778, #35365, #35375)
FixWindows 固有の修正ナビゲーションキー対応、サンドボックス内プロセスツリーの確実な終了、セキュリティレビュー時のプロキシ設定保持 (#34625, #34624, #35036)
Fixスキルカタログの保持と警告厳しいコンテキスト制約下でより多くのスキルを保持し、カタログが切り詰められた際に警告 (#34732, #34738, #34997)
DocumentationHTTP クライアント・プロキシ対応のドキュメント整備共有 HTTP クライアント、プロキシ対応接続プール、安全なアウトバウンドリクエスト処理の文書化 (#34669)
DocumentationWindows ドライブ文字正規化の明確化PathUri 値における Windows ドライブ文字の正規化に関する説明 (#34667)
Choresリリースインフラの OpenAI ホスト化リリース成果物、チャンネルメタデータ、インストーラエイリアスを OpenAI ホストインフラ経由で公開(GitHub フォールバック付き) (#34505, #34508, #34729, #34910)
ChoresmacOS ヘルパー実行ファイルの署名バンドルされる macOS ヘルパー実行ファイルをパッケージング前に署名・公証 (#35264)
Choresapp-server のシリアライゼーション最適化シリアライゼーションオーバーヘッドと不要なリクエスト構築時のアロケーションを削減 (#34761, #34766, #34825)
Choresエンタープライズプラン対応エンタープライズプラン認識と管理者によるアプリ内更新制御を追加 (#35238, #35537)

まとめ

rust-v0.146.0 は New Features 6件、Bug Fixes 6件、Documentation 2件、Chores 4件で構成されるリリースです。新機能側はセッション命名・ピン留め・サイド会話の保持、Agent Plugins マニフェストとマーケットプレイス拡張、ページネーション対応のスレッドフォーク、リモート Code Mode ホストへの WebSocket 接続、カスタムモデルプロバイダーでのスタンドアロン Web 検索、executor 提供スキルの検出とリソース読み取りが並びます。

Bug Fixes 側は、プロキシを尊重する通信経路の拡大と MCP 接続の維持・再接続が中心で、ほかに送信済みメッセージや承認設定の保持、ターミナル応答性とレンダリング、Windows 固有の修正、スキルカタログの保持と警告が含まれます。

Chores にはリリース成果物の OpenAI ホストインフラ経由での公開(GitHub フォールバック付き)、macOS ヘルパー実行ファイルの署名・公証、app-server のシリアライゼーション最適化、エンタープライズプラン認識と管理者によるアプリ内更新制御が入っています。日常の操作に直接現れる変更ではありませんが、配布経路と管理機能に関わる項目です。


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