はじめに

2026年6月16日、OpenAI Codex CLI の rust-v0.140.0 がリリースされました。本バージョンでは、日々の開発ワークフローを大きく改善する機能強化が多数含まれています。

主な変更点として、/usage コマンドによるトークン使用状況の可視化、/goal コマンドでの大容量テキストや画像添付の完全サポート、セッション完全削除機能の追加、そして Claude Code からの設定やチャット履歴の選択的インポート機能が挙げられます。また、@ メンション機能の統合メニュー化、Amazon Bedrock API キーの管理認証対応、MCP OAuth 認証情報の暗号化ローカルストレージ対応など、セキュリティと利便性の両面で大幅な改善が施されています。

バグ修正面では、SQLite データベースの破損からの自動復旧、MCP サーバー起動の信頼性向上、バックグラウンドコマンドの Ctrl-C 処理改善など、安定性に関わる重要な修正が含まれています。さらに、大規模リポジトリや長時間セッションでの応答性向上のため、Git ファイルシステムモニタの保持、履歴読み込みの最適化、アーカイブ検索の高速化、差分レンダリングのキャッシュ化など、パフォーマンス改善も多数実装されました。


注目アップデート深掘り

1. トークン使用状況の可視化:/usage コマンドの追加

今回のリリースで追加された /usage コマンドは、日次・週次・累積のアカウント単位でのトークンアクティビティを可視化する新機能です(#27925)。この機能は、Codex CLI を業務で継続的に使用するチームにとって、コスト管理と使用状況の把握において極めて重要な意味を持ちます。

従来、トークン消費量を把握するには外部の管理コンソールやログを確認する必要がありましたが、/usage コマンドの導入により、CLI 上で即座に使用状況を確認できるようになりました。日次ビューでは当日のトークン消費をリアルタイムで追跡でき、週次ビューでは週単位のトレンドを把握し、累積ビューではプロジェクト全体やアカウント単位での総使用量を確認できます。

この機能は特に、複数のチームメンバーが共有アカウントを使用している場合や、予算管理が厳格なプロジェクトにおいて有用です。定期的に使用状況をチェックすることで、予期しない大量トークン消費を早期に検知し、プロンプトの最適化や使用パターンの見直しといった対策を迅速に講じることができます。SRE やインフラチームが自動化スクリプト生成に Codex を活用する際も、コスト効率を意識した運用が可能になります。

Note: /usage コマンドはアカウント全体のトークンアクティビティを表示します。セッション個別の使用状況ではなく、アカウントレベルでの集計データが提供されます。

2. セッション管理の強化:完全削除機能とデータクリーンアップ

rust-v0.140.0 では、codex delete CLI コマンド、/delete TUI コマンド、そして app-server の thread/delete API を通じて、セッションの恒久的な削除機能が追加されました(#25018, #27476)。この機能には確認セーフガードが組み込まれており、サブエージェントのクリーンアップも自動的に実行されます。

従来のバージョンでは、セッションやスレッドの管理は限定的で、不要になったデータを完全に削除することが困難でした。今回の実装により、機密情報を含むセッションや、テスト目的で作成した一時的なスレッドを確実に削除できるようになり、データガバナンスとストレージ管理の両面で改善が図られました。

特に重要なのは、削除前の確認ステップが実装されている点です。誤操作による重要なセッションの削除を防ぎつつ、意図的な削除を確実に実行できる設計になっています。また、マルチエージェント構成でサブエージェントが存在する場合でも、それらの関連データが適切にクリーンアップされるため、データの整合性が保たれます。

SRE の観点からは、本番環境での検証後に機密データを含むセッションを完全削除できる点が重要です。コンプライアンス要件やデータ保護規制に対応する際、この機能は不可欠なものとなるでしょう。また、長期運用においてストレージ容量の効率的な管理にも貢献します。


実用的な活用ポイント

本リリースで追加された機能は、日常の開発ワークフローに即座に活用できるものが多数含まれています。

@ メンション統合メニューの活用
タイピング時に @ を入力すると、ファイル・プラグイン・スキルの統合メンションメニューがデフォルトで開くようになりました(#27499)。これにより、参照したいリソースを素早く検索・選択でき、プロンプト作成の効率が大幅に向上します。特に大規模なプロジェクトで複数のファイルやスキルを参照する際、この機能は作業時間の短縮に直結します。

Claude Code からの移行サポート
新しい /import コマンドを使用すると、Claude Code からセットアップ設定・プロジェクト構成・最近のチャット履歴を選択的にインポートできます(#27070, #27071, #27703)。他のツールから Codex CLI への移行を検討しているチームにとって、既存の作業履歴や設定を引き継げる点は大きなメリットです。

Amazon Bedrock 統合の簡素化
Amazon Bedrock API キーの管理認証と、CLI および MCP OAuth 認証情報の暗号化ローカルストレージが実装されました(#27443, #27689, #27504, #27535, #27539, #27541)。AWS 環境で運用しているチームは、より安全かつシームレスに Bedrock モデルを活用できるようになります。

パフォーマンス改善の体感
大規模リポジトリや長時間セッションでの応答性が向上しています。Git の組み込みファイルシステムモニタの保持(#26880)、重複する履歴読み込みの回避(#27031)、アーカイブ検索の高速化(#27276)、差分レンダリングのキャッシュ化(#27489)などにより、日常的な操作がよりスムーズになります。

信頼性の向上
破損した SQLite データベースからの自動復旧機能(#26859, #27719)により、予期しないデータベース障害が発生してもロールアウトデータから自動的に再構築されます。また、MCP サーバーの一時的な起動失敗の自動リトライ機能(#25147, #26713, #27414)により、接続の安定性が向上しています。


全変更点一覧

カテゴリ内容概要
Feature/usage コマンド追加日次・週次・累積でアカウントトークン使用状況を表示 (#27925)
Feature/goal の大容量テキスト・画像対応大きな貼り付けブロックや画像添付、リモート app-server セッションでの保持 (#27508, #27509, #27510)
Featureセッション完全削除機能codex delete, /delete, app-server thread/delete による恒久削除。確認セーフガードとサブエージェントクリーンアップ対応 (#25018, #27476)
Feature/import コマンド追加Claude Code からセットアップ・プロジェクト構成・最近のチャットを選択的にインポート (#27070, #27071, #27703)
Feature@ 統合メンションメニュー@ 入力時にファイル・プラグイン・スキルの統合メニューをデフォルト表示 (#27499)
FeatureAmazon Bedrock 認証管理Bedrock API キーの管理認証と CLI/MCP OAuth 認証情報の暗号化ローカルストレージ (#27443, #27689, #27504, #27535, #27539, #27541)
FixSQLite データベース自動復旧破損した状態データベースを自動バックアップしてロールアウトデータから再構築。ディレクトリが不正な形式の場合も対応 (#26859, #27719)
Fix/review クラッシュ防止Esc キー押下時のクラッシュを修正。キャンセル時にガイダンスを保持 (#22879)
FixMCP 信頼性向上一時的な起動失敗の自動リトライ、使用不可な OAuth 認証情報のログアウト報告、明示的に無効化されたサーバーの保持 (#25147, #26713, #27414)
Fixリモートプラグインアンインストール修正リモートプラグインのアンインストールリクエストを修正。インストール時の認証要求表示を改善 (#27085, #27223)
Fix更新通知の保持とフック表示“今後表示しない” 更新通知の確実な保持。完了したターン後の古い実行中フック表示をクリア (#27619, #27783)
Fix非 TTY バックグラウンドコマンドの Ctrl-C 処理最終出力と終了ステータスを保持しながら Ctrl-C で中断可能に (#26734)
Improvement大規模リポジトリの応答性向上Git ファイルシステムモニタの保持、重複履歴読み込み回避、アーカイブ検索高速化、差分レンダリングキャッシュ化 (#26880, #27031, #27276, #27489)
Chore/realtime 音声コントロール削除実験的な /realtime 音声コントロールと関連オーディオ依存関係を TUI から削除 (#27801)
Documentationコントリビューターガイダンス明確化Crate API の狭い範囲維持と Linux/macOS/Windows サポートに関するガイダンス (#27939, #27966)

まとめ

rust-v0.140.0 は、使用状況の可視化、データ管理の強化、開発体験の向上を軸とした、バランスの取れたアップデートとなっています。/usage コマンドによるトークン消費の透明性向上は、コスト管理を重視する組織にとって待望の機能であり、セッション削除機能の追加はデータガバナンス対応を大きく前進させるものです。

また、@ メンション統合メニューや /import コマンドといった日常的な操作の改善、Amazon Bedrock 統合の簡素化、そして大規模リポジトリでのパフォーマンス改善は、開発者の生産性向上に直結します。信頼性面でも、SQLite データベースの自動復旧や MCP サーバー起動の堅牢化により、予期しないエラーへの耐性が強化されました。

一方で、実験的な /realtime 音声コントロールと関連するオーディオ依存関係が TUI から削除されました。全体として、本リリースは実用性と安定性を重視した進化を遂げており、エンタープライズ環境での採用をさらに促進する内容となっています。


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