
今回は、直近で発表された6件のAWSアップデートを紹介します
はじめに
今回の6件は、Amazon Connect Customer の2件(エージェント間協調、ルーティングステップデータのデータレイク提供)、Amazon Bedrock Managed Knowledge Base の Salesforce / Zendesk コネクタ、Amazon CloudWatch Omni の一般提供、Amazon EMR の2件(EMR 7.14、長期サポート(LTS)リリースの導入)です。本記事では Bedrock のコネクタと CloudWatch Omni を深掘りし、SRE 視点での活用ポイントを解説します。
注目アップデート深掘り
Amazon Bedrock Managed Knowledge Base:Salesforce・Zendesk コネクタに対応
フルマネージドの RAG(Retrieval-Augmented Generation)サービスである Amazon Bedrock Managed Knowledge Base に、Salesforce と Zendesk のデータソースコネクタが追加されました。Salesforce のナレッジ記事と、Zendesk の記事およびコミュニティ投稿を、ナレッジベースに直接同期できます。
これまでは、これらのプラットフォームのコンテンツを Bedrock Knowledge Bases に取り込むには独自の取り込みパイプラインが必要でした。今回のコネクタでは、インスタンスの認証情報を渡すだけで、次の処理をコネクタが自動で行います。
- データのクローリング
- メタデータの抽出
- 差分同期(インクリメンタル同期)
告知が挙げる例は、最新の Zendesk ヘルプセンター記事とコミュニティの回答を使う顧客向けサポートボットや、商談準備中に関連する Salesforce ナレッジ記事を取り出す社内向けの営業支援アシスタントです。ナレッジベースがこれらのプラットフォームと同期し続けるため、RAG アプリケーションは手作業なしで最新のコンテンツを反映します。
Amazon CloudWatch Omni:一般提供開始
Amazon CloudWatch Omni が一般提供されました。告知では「Amazon CloudWatch の進化版」と位置づけられ、OpenTelemetry の相互運用性と CloudWatch のスケール・信頼性を組み合わせたものとしています。
告知に記載された主な機能は次の通りです。
- スペース: 中央アカウントにスペースを作成し、AWS のアカウントとリージョンをまたいだテレメトリーに加え、Azure ワークロードを含む他クラウドのテレメトリーも確認できる
- 自動検出: サービスを自動で検出し、依存関係をマッピングし、ゴールデンメトリクスを提示する
- 自然言語での問い合わせ: 自然言語で質問すると、関連するテレメトリーを見つけて動的なビューを構成する
- 根本原因の特定: AWS DevOps Agent による根本原因の特定を支援する
- Agent Toolkit for AWS: テレメトリーへの直接アクセスに利用できる
- AI エージェント開発者向け: LangGraph、CrewAI、OpenAI Agents SDK、Vercel AI SDK、Strands に対応
- IDE 拡張: VS Code、Cursor、Kiro 向けの CloudWatch Omni 拡張
提供リージョンは米国東部(バージニア北部)、米国西部(オレゴン)、欧州(アイルランド)です。料金は専用の料金ページで案内されています。
SRE 視点での活用ポイント
CloudWatch Omni の評価
- AWS と Azure の両方でワークロードを運用している場合、スペースで他クラウドのテレメトリーをまとめて見られるかが評価の中心になります
- 提供リージョンは現時点で3リージョンのため、中央アカウントをどのリージョンに置くかを含めて検討します
- 料金は告知本文には書かれていないため、既存の CloudWatch 利用分と合わせて料金ページで確認します
Amazon Connect のルーティング分析
Amazon Connect Customer のルーティングステップデータが分析用データレイクで提供されるようになり、Amazon Athena や Amazon Quick で、各ルーティングステップでキューに入った件数やエージェントにつながった件数の傾向を、複雑なデータパイプラインなしで分析できます。告知の例では、コンタクトが各ルーティングステップをどう進んだか、エージェントのマッチング条件がどこで緩和されたか、ルーティングステップの設定が待機時間とエージェント稼働率にどう影響したかを分析できるとしています。
Amazon Connect のエージェント間協調
Connect Customer の AI エージェントは、オープンな A2A(agent-to-agent)プロトコルで、テキストまたは双方向音声を使って、互いに、また Connect Customer 外の AI エージェントとも協調できるようになりました。告知の例は、顧客の電話に対応する最前線の AI エージェントが不正評価を専門エージェントに委ね、複雑な異議申し立てを別のエージェントにエスカレーションする銀行のシナリオです。各エージェントの発言、呼び出したツール、各ステップの所要時間が1つのコンタクトレコードにまとまり、分析や AI の品質管理に使えます。複数エージェントでの構成を運用する場合は、このコンタクトレコードを品質確認の起点にできます。
Amazon EMR の LTS と 7.14
- LTS リリースは emr-spark-8.1.0(Apache Spark 4.1)から始まり、36 か月サポートされます。提供されるのは、重大度が critical / high のセキュリティ・バグ・データ破損の修正です(告知では「利用可能な場合」の条件付き)。アップグレード頻度を抑えたい本番ワークロードでは候補になります
- EMR 7.14 では、EMR Serverless の Spark ジョブのストレージ上限が 200 GiB から 1 TiB に拡大され、シャッフルデータに使える容量が増えました
まとめ
Bedrock Managed Knowledge Base の Salesforce / Zendesk コネクタにより、独自の取り込みパイプラインなしでこれらのコンテンツを RAG に使えるようになりました。CloudWatch Omni は、他クラウドを含むテレメトリーの横断表示、自動検出、自然言語での問い合わせ、AI エージェント向けの可観測性を備えて一般提供されました。Amazon Connect ではエージェント間協調とルーティングステップデータの分析、EMR では LTS リリースの導入と EMR 7.14 が加わっています。
全アップデート一覧
| タイトル | 概要 |
|---|---|
| Amazon Connect Customer now provides routing step data in the analytics data lake | ルーティングステップデータがアナリティクスデータレイクで利用可能に。Amazon Athena や Amazon Quick で、ルーティングステップ設定が待機時間やエージェント稼働率に与える影響を、複雑なデータパイプラインなしで分析可能。 |
| Amazon Bedrock Managed Knowledge Base now supports Salesforce and Zendesk as native data source connectors | Salesforce のナレッジ記事、Zendesk の記事とコミュニティ投稿を同期可能に。インスタンス認証情報を渡すだけで、クローリング・メタデータ抽出・差分同期をコネクタが自動で処理。 |
| Amazon Connect Customer launches agent-to-agent collaboration | エージェント間協調機能をサポート。オープンな A2A プロトコルで AI エージェント同士がテキスト・音声で協調作業し、複雑な顧客リクエストを段階的に解決。単一の連絡記録で分析・品質管理が容易に。 |
| Amazon CloudWatch Omni: AI-first observability for agents and applications | CloudWatch の進化版として一般提供開始。AWS アカウント・リージョンと Azure などの他クラウドのテレメトリーを横断して見られるスペース、OpenTelemetry との相互運用性、自然言語での問い合わせ、AI エージェント開発者向けの可観測性を提供。バージニア北部・オレゴン・アイルランドで利用可能。 |
| Amazon EMR 7.14 is now available | Apache Spark 3.5.8、Apache Iceberg 1.10.1 にアップグレード。更新・削除のあるテーブルで Iceberg マテリアライズドビューが変更データキャプチャ(CDC)により高速にリフレッシュ。EMR on EKS でトークン認証付き Spark Connect エンドポイントと IPv6 EKS クラスターに対応。EMR Serverless の Spark ジョブのストレージ上限を 200 GiB から 1 TiB に拡大。 |
| Amazon EMR introduces Long Term Support with Apache Spark 4.1 | emr-spark-8.1.0(Apache Spark 4.1)から、36 か月サポートされる長期サポート(LTS)リリースを導入。Apache Iceberg v3 の完全サポートで地理空間データ、高精度タイムスタンプに対応。クロスアカウント・S3 Tables カタログの名前参照、きめ細かいアクセス制御の対象拡大、EMR on EKS での Spark Connect のトークンベース認証をサポート。 |